【完】淡い雪 キミと僕と

図星をつかれて、大爆発。

少し大人げない所があったか…。

でも、あそこまで酷い事を、友人の前で言う事ないじゃない。

やっぱり嫌い。嫌い嫌い嫌い。大ッ嫌い!

あいつの過去の話を聞いて、少しだけ同情してしまった自分が馬鹿みたい。気まぐれの優しさに触れて、少しでもあいつが良い奴なんて思ってしまった自分が阿保らしい。

それでも、少しだけ…大人げない所があっただろうか…。痛い所をつかれて怒ってしまうのは、彼の言葉が全て図星だったから。だってそれが事実じゃなけりゃー笑って流せるでしょう?

「ミャー」

「雪ぃ…。誰にでも懐くのはアンタの良い所かもしれないけど、そういう所を八方美人だと言うのよ?」

「ミャー!」

八方美人なんて、決して褒め言葉ではなかったのに、雪は何故か嬉しそうに床にゴロゴロと転がる。

本当に、この子と来たら、時たま不安になってしまう。

先程連絡もなく訪れた初対面の五十嵐さんにも、甘える素振りを見せて媚びを売っていた。宅配のお兄さんにもついていってしまいそうな程懐くし、人間とあらば誰でも良い風にも映る。

警戒心が無さ過ぎなのよ。

簡単に人を信じて、誰にでも媚びを売って、愛して愛してと小さな身体をすり寄せる。それじゃあ弱肉強食の世界では到底生きていけないだろう。どこまでも人を疑わない純粋な心、羨ましく思う時もあるが。

雪の愛らしさを、ほんの少しで良いからあいつに煎じて飲ませたい。どうしてあんなに捻くれているというのよ?!


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