【完】淡い雪 キミと僕と
1.大輝『西城 大輝 27歳 西城グループ 社長令息』
1.大輝『西城 大輝 27歳 西城グループ 社長令息』
小汚い子猫を保護したのが運の尽きだったと思う。
事の発端は、学生時代からの友人である五十嵐隼人に具合いの悪いという飼い犬を動物病院に無理やり連れて行かされた事だ。
隼人の飼っているやたらと吠える馬鹿犬は、何やら小さいボールのような物を飲み込み、開腹手術を行う事になった。
仕事が忙しいと言っていた隼人。何故こんな馬鹿げた頼みを聞き入れてしまったかというと、こいつには借りというものがあったからだ。
そこの動物病院は院長がお人好しというか何というか
今時捨てられた子猫などを保護して、新しい飼い主を探すなんつー事をボランティアとしてやっていた。事実病院に隣り合った場所に建てられた獣医の自宅にもそういって捨てられた猫を5匹も引き取り飼っているらしい。
根っからの動物好きであるのだろう。かくいう俺も余りにも隼人の飼い犬を助けてくれと必死に頼むもんだから、かなりの動物好きに思われたに違いない。ただ、隼人に後からグチグチ言われるのがごめんだっただけなのに。
勘違いした獣医から
可愛い子猫ちゃんがいるんですよー
引き取り手がいなくて困ってるんですー
なんて声を掛けられて、無理やり対面する羽目になってしまった。
適当に理由をつけて逃げてこよう。そう思っていた。
古びた段ボールの中には、6匹の兄弟猫。どれもこれもちっこくて、ミャーミャーとうざいくらい鳴き叫んでいた。
獣くせーし、汚ねーし、根本的に何も人間の役に立ちやしない動物つーもんは嫌いだった。
けれど、その6匹の兄弟の中に、パッと目を惹くような小汚いちっけー猫がいた。兄弟猫の中でも明らかに小さくて、弱々しかった。