【完】淡い雪 キミと僕と
本来ならば、月曜日から金曜日は雪の面倒を見に彼はやって来る。
今日も勿論そのつもりだっただろう。
しかしそれを察知して、朝早く家を出て、実家のママに雪は預けてきた。パパとママはまさかわたしが猫を飼っているなんて知るわけもなく、音耳に水といった感じで驚いていた。実家ではペットなんて飼った事は今までない。
けれどもそこは雪のコミュ力の高さ。
愛らしい鳴き声を発して、パパとママに媚びを売る様子は手慣れたもんで、そんな愛想の良い雪に、ふたりはあっという間に心奪われデレデレになった。
昔から猫か犬を飼いたかったのよぉ~でもアナタと美麗は動物が嫌いみたいだから~、とはママ。
何を言う。俺は小さな頃から実家には犬がいたから、無類の動物好きなんだ、しかし生き物と言うのは俺より先に死んでしまうからそれが悲しくて悲しくて、はパパ。
孫でも来たかといった感じで、ふたりはあっという間に雪の虜になってしまった。それどころかちょっとした取り合いになっていたのが笑えた。
それでも雪はあのみすぼらしく弱々しかった猫とは思えないほど、動物病院から帰ってきて大きくなった。
そして1日、1日、大きくなっていく。猫の成長は早いという。いつの間にかあっという間に大きくなってしまうのではないだろうか。
西城さんが雪を連れてきた時あらかた猫グッズは用意し買ってきていた。その中には子猫のお留守番用の猫ゲージもあった。
そこにご飯と水とトイレを置いておけば、半日程度ならば子猫の雪だって大丈夫であっただろうとは思う。
それでも心配すぎて、もしも居ない時に雪に何かあったら困るから、実家に預けてきた。
あの男の事だ。チェーンのかかっていない家に勝手に入り込む事は予想されていた。
だからこそ、実家に預けてきた。今頃わたしの家に雪がいない事を知り、パニックになっているに違いない。それはちょっとした仕返しのつもりだった。
電源の切れた携帯からは、小うるさい着信は途切れた。