【完】淡い雪 キミと僕と
「連絡、彼氏さんからですか?」
自分で毎日作るという千田ちゃんのお弁当はいつだって可愛らしい。彩りが良く、実に彼女らしいピンク色のお弁当箱。
その中のおかずを頬張りながら、こちらへ話を掛けた。
「いや、全然わたし彼氏いないしね」
「えぇ~?!山岡さんモテますよねぇ?」
「いえいえ、全く。ずっと彼氏なんていないわ。わたし、モテないって」
「またまたご謙遜を~!
だって山岡さんの事を好きだっていう男性社員だって多いんですよ。まぁ山岡さんくらいだったら、相手にする男性も普通の人じゃないですよね~
わたしなんて~…全然彼氏が出来なくて…。あ、好きな人はいるんですけどね!」
「そうなの?初耳。誰なの?わたしの知ってる人?」
「そうなんです~!内緒ですよ?
取引先の、雪村さん、分かります?よくうちの会社に来るんですけど」
「雪村って…あのブサ…じゃなくて結構個性的なタイプの方よね?」
不細工と言いかけて、千田ちゃんは口を大きく拡げて大笑いした。
違うのよ。人を容姿で判断するとかではなくて…今のは、なんというか素直な言葉が口をついて出てしまったというか。
しかし千田ちゃんの言う雪村という男は、決して整った顔の男とは言えないのだ。どちらかといえば中の下。女性には縁のなさそうな…。だけど人の良さそうな笑顔を向ける男で、誰にでも愛想の良い人だった。
勿論眼中にはなし。でも改めて思えば、訪問してきたかと思えば、いつも千田ちゃんと楽しそうにお喋りをしていた。