【完】淡い雪 キミと僕と
それは誤解だ。
わたしが最近失恋した井上さんは普通のサラリーマンだった。
高校時代に付き合っていた彼は確かに学年でも目立つ同級生だったし、大学時代に付き合ったサークルの先輩もサークル内ではよく目立つ人だったけれど。
でもどちらも3か月も続かなかった。
確かに港区で遊んでいた女ではあるのだけど、恋愛経験は少ないのだ。そして、恥ずかしい事に24歳になった今にしてもわたしには男性経験がない。
誰も夢にも思わないだろう。
わたしはそれを恥だと思い隠し続けている。パパは男女交際に対して厳しい人ではあったけれど、大切に守ってきた訳ではない。結婚するまでは綺麗な身体でいたいという貞操観念があった訳でもなく、何となくこのままここまで来てしまった感が否めないのだ。
わたしは決して、シンデレラストーリーの主役になれるような人間ではない。
どちらかといえば、ヒロインの邪魔をして暗躍する悪い女。シンデレラの話で言えば、意地悪なお姉さんあたりだろうか。
「今度わたしの話聞いてくれますか?」
「えぇ勿論。千田ちゃんと話すのは楽しいし、今度是非飲みに行きましょうよ」
「えー嘘ー!山岡さんと飲みに行けるなんて嬉しいなぁ。わたし、ほんっと山岡さんって憧れなんですよ。
素敵なお店探しておきますねッ」
「あら、わたしは結構居酒屋とかが好きなのよ」
「そーなんですかー?意外ー!そういう所も素敵ですよねぇ。
わたしも実はお洒落なお店って苦手で、居酒屋とかでビール飲んでる方が性にあってるっていうか」
「気が合うわね」