【完】淡い雪 キミと僕と
わたしへ向ける純真な笑顔も、彼女の想い人雪村さんへと向ける笑顔も同じものだった。
彼女は素敵な人だ。
勿論裏表もなく、わたしを褒める言葉も、あくまでも本心なのだろう。
わたしはシンデレラストーリー主役にはなれない。
きっと、誰かが物語を紡ぐのであれば、主役にするのは千田ちゃんの方だ。
決して容姿はそこまで美しいとは言えないけれど、とても心が綺麗で真っ直ぐで読者は共感するだろう。
そして、物語の王子様が選ぶとすれば、わたしではなく、ひとつも嫌な顔をせずに仕事をこなして、誰にでも優しく接する事の出来る千田ちゃんだろう。
ぼんやりと西城さんの事を思い出していた。
雪のいなくなった部屋に合鍵で入って茫然としている事だろう。だって彼はとても雪を愛していたから。
図星をつかれた事を言われて、少しだけ意地悪をしてやろうと思った。
不覚にも泣いてしまったのが、恥ずかしかった。心から怒っていたわけではない。だって彼の言う事は当たっていたし、余りにも図星をついていて、言葉にもならなかった。
シンと静まり返り、メッセージの受信を止めた携帯を見つめ、西城さんと再び繋がったあの日の事を思い返していた。