【完】淡い雪 キミと僕と
ぶっちゃけついでに、自分が港区女子である事も暴露した。
彼は港区女子って何?と目をぱちくりさせ、不思議な顔をした。
もう自棄になって、どこまでも最低な自分を披露してやろうと思った。それで井上さんが心から幻滅をして、もうわたしの顔なんて見たくないと思えばいい。
「わたしってじつーはすごく嫌な女なんです。
夜な夜な業界関係者とかと飲み歩いて出会いを探しているような
そしてお洒落なお店に行って、高級ブランドをプレゼントしてもらって
SNSに日々投稿して、女同士で下らないマウントを取り合うような
そしてそんな下らない事で優越感を得ているような
そう。わたしは実はそんな嫌な馬鹿女なのです」
何故だろう。言ってしまえばどこかでホッとした自分がいた。
そして、彼から大阪出張土産だと言われ渡されたたこ焼きキーホルダーを見せて
「このような品物は趣味ではありません。
もらった時一瞬ギャグかと思いましたが
あなたが余りにもキラキラした瞳をわたしへ向け
可愛いでしょう?と真剣に言ってくるものですから
ぜっんぜん可愛くない、とは言えなくなりました」
とまで。
しかし、そのたこ焼きキーホルダーは、未だにわたしのペンケースにつけられ、大切な物として機能している。不思議な話だ。
わたしの大暴露に、井上さんは声を上げて、大笑いをした。
こんなに楽しそうな井上さんを見るのは初めてだった。一緒に食事をしても、休日に出かけても、決して彼はこのような笑顔をこちらへ向ける事はなかった。
いつだって優しく柔らかい笑顔を向けてくれていたけれど、楽しそうに笑う彼は、いつもの穏やかな彼よりもずっと素敵だった。その時にわたしは自分の犯した過ちにやっと気づいたのだ。