【完】淡い雪 キミと僕と

「あなたの事だって…全然好きじゃなかった…
晴人くんは良い大学を出て、将来有望株だからちょっとちょっかい出そうってそんな軽い気持ちだった」

「有望株?」

「わたしのよーな一般職の女は将来いかに良い男と結婚出来るかとかしか頭にはありません。
どうせバリバリのキャリアウーマンになんてなれやしないし
そうであるのなら日々仕事のスキルを上げるというよりかは
日々美しく綺麗であることが重要になってくるのでーす」

「なるほど」

「ね?わたしって嫌な女でしょう?
別にご飯行ったりしてたのだって晴人くんだけじゃないし
他の男にもちょっかいだして」

「いや、それは言う程嫌な女でもないよ
少なくとも、前の山岡さんよりかはずっと仲良く出来そうだ」

そして意外な言葉を言い放ったのだ。

「そういう風に自然にしている方がずっといいよって話」

あぁ、そういう事だったのか。

もしかしたら、最初から自然な自分を出していたのならば、未来を変えられたのかもしれない。少なくとも、こんな結末は迎えなかったのかもしれない。

どうしてわたしは、自分を作ってしまっていたのだろう。

作り物の自分を愛してもらえると思ったのだろう。港区では、重宝されていたからといって、全く同じ事をしたとして井上さんがわたしを好きになってくれる保証なんてなかったのに

何を驕り高ぶっていたと言うのだろう。

クリスマスにプレゼントしたマフラーはあの日返された。それはバックの中でいつでも息を潜めていて、これがチャンスだと言わんばかりに、返されたプレゼントを再びあげた。

物に罪はないのだから、と可愛げのない事を言って。せめて、あの日井上さんの為に選んだプレゼントだけは受け取って欲しかったのだ。

その気持ちだけは嘘じゃなかったのだから。

彼は快く受け取ってくれた。行き場の失くしたマフラーもこれで浮かばれただろう。


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