【完】淡い雪 キミと僕と

「ママ!あたし帰る!」

「え~泊っていけばいいじゃないのぉ~…」

「そうだそうだ。俺は今日雪と一緒に寝るんだ」

「いいのッ!帰る!あ、唐揚げとサラダ残りある?!
あるなら持って帰る!」

「何よ~騒々しいわねぇ~せっかく久しぶりに帰って来たって言うのに…
はいはい、分かりましたよ。唐揚げとサラダ詰めますから、ちょっと待って下さないなっと」

パパは最後まで文句を言っていた。よっぽど雪が気に入ったのか、久しぶりに娘が帰ってきて嬉しかったのかは知らないが。

名残惜しそうに、雪を見つめた。

それでも大慌てで雪を猫キャリーに詰め、ママからタッパーに入った唐揚げをサラダを受け取り、大急ぎで実家を後にした。



あの男は、きっと待っているに違いない。

ムカつく男だったが、約束などの類は守るタイプだ。

そして雪に会いたくて堪らなく、勝手に雪を連れ去ったわたしに苛々しているはずだ。何で連絡ひとつ返さねぇ?!と怒鳴られるのはもう想定内。もうわたしはあの日の事を怒ってはいない。少し拗ねて困らせてやろうと意地悪しただけの事。

しかし少しやりすぎた。だからこれから彼がどれだけ怒ろうと、それは甘んじて受け入れようと思う。

…ムカつくけど。

しかし大慌てでマンションに帰って来たら、彼はドアの前で腕を組んでそこにただただ立ち尽くしていた。わたしを見つけ、心底安心した顔を見せたのが酷く拍子抜けした。

絶対に怒り、怒鳴られると思っていたからだ。それどころか、彼は驚く行動を次に取った。


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