【完】淡い雪 キミと僕と
「申し訳ない」
そう謝罪の言葉を一言述べ、姿勢を正し、こちらへ向かって深く頭を下げた。
開いた口が塞がらなかった。つか…何故家の中にも入らずに、扉の前にいるというのだろう。合鍵は持っているはずなのに。
額には汗をかいていたし、腕が捲られたワイシャツは汗で張り付いていて、少しだけ透けている。
どれだけの時間、ここで待っていたというのか。
「どうして?合鍵持ってるじゃない。中で待っていれば良かったのに…」
「いや、アンタがいない部屋に勝手に上がるのは余りにも失礼すぎるだろう。ただでさえ怒らせてしまっているというのに」
「ずっとここで待っていたの?」
「いや、さすがにずっとは無いよ。だって暑いし。熱中症で倒れちまう。
途中で仕事で抜けだしたり、カフェで涼んだり、その都度連絡はいれたんだが、無視されるし…」
「そんなに雪に会いたかったの…?」
「違ぇよ。確かに雪には会いたかったけど。
きちんとアンタに謝りたかったんだ。本当にすまなかった。ごめんなさい。
あんな言葉本心ではなかった。何故俺もあんな事を言ってアンタを傷つけてしまったのか分からないんだ。
本当にすまない………」
怒りはしなかった。それどころか傷ついた顔をして。傷つけられたのはこっちだっつーのに、これじゃあ逆に心が傷んでしまうじゃないか。
全く、こいつは何と言うかすっげー嫌な奴かと思えば、ずっと待っててくれたり、心のこもった謝罪をしたり、よく分かんない奴。
「本当に馬鹿ね……
取り合えず、家に上がりなさいよ。暑いでしょう?」
「いいのか?!」