【完】淡い雪 キミと僕と
パアッと明るい笑顔を浮かべる。だからアンタは何でそんななのよ。そういうのは雪だけでいいっつーのに。
悪い事をしても反省して少し弱々しい姿を見せれば許されるのは、猫の…いや雪だけの特権なのよ?あなたには、適応される資格じゃないわ。
だから家に上げてあげるのは、あくまでも同情であるというのを忘れないでいただきたいものだわ。東京の真夏日に、汗だくになっている人間を放置出来るほど、悪魔ではないって事。
西城さんはやたらとデカい荷物を手にして、家へ上がる。
家へ上がったら勝手に冷房をつけて、喉が渇いたなんて言いながら勝手に冷蔵庫からお茶を取りだすから、さっきの言葉を前言撤回したくなったけれども、まぁそれもこの人らしいから今日だけは目を瞑ってあげる。
あくまでもわたしの好意だという事を忘れないようにね?
「はぁ~やっぱり家はいいもんだ」
「あなたの家じゃないですけど?」
「そりゃそうだろ?!俺がこんな犬小屋みたいな小さな家に住んでたら失笑もんだッ」
減らず口とはこの事をいうのではないだろうか。
「おぉ雪ぃ~会いたかったぞ~!可愛いなぁ。お前も会いたかったのか?そうかそうか」
雪は雪で、さっそく西城さんのお腹の上に乗って、幸せそうな表情を浮かべる。さっきまでパパのお腹の上に乗って幸せそうな顔をしていたけどね、とは言わないでおいてあげよう。
「そうだ!お腹空いてる?」
「そりゃーそうだろ?!アンタを怒らせたと思って食欲さえもなかったんだからな?!
それなのに連絡の1本も返さねぇでほんっとクソだな、クソ女だッ」
だから…さっきまでの反省はなんだったというのか。演技か?!とも疑いたくもなるものだ。
結局はこういう奴なのだ。
西城大輝という男は、どこまでも傲慢で俺様で偉そうで、さっきまであんなに頭を下げて必死に謝罪をしたから、反省しているかと思えば、口を開けばこの様だ。
再び追い出したくはなったが、ここは少しわたしが大人になるべきだろう。
少しだけカチンとはきたけど、ママが作ってくれた唐揚げとサラダのタッパーを取り出して、テーブルの上に置く。