【完】淡い雪 キミと僕と
「これは……?」
「ママの唐揚げとサラダ。美味しいよ。ママは料理が上手なの。サラダのドレッシングも手作りなんだけど、どんな一流シェフのドレッシングより美味しいんだから」
「手作りだと?母親の?あの、例の子豚のママか?!」
「もー、だからアンタは一言多いつーのよ。食べないならわたしが食べるからいいわよ」
「いやッ食う!全部食うッ。アンタは食ってきたんだろう?それならば俺が全部食う」
果たして、子豚のママが作った料理が、彼の口に合うというのだろうか。
ただの一般家庭の、少しだけ料理が上手な主婦が作った、特徴もない料理だ。
世界の高級料理を食べてきてる、口の肥えてる彼の事だ。きっと馬鹿にするに違いない。庶民とはこういう物を食べているのか、なんて悪態をついて
ペッと口から吐き出されたら、それはそれで今度は本気で家から追い出そう。そう心に決めた。
しかし彼は予想外の反応を見せた。
「んん~ッ?!これはッ」
一口唐揚げを口にし、すぐにサラダに手を伸ばした。
相変わらず育ちの良さそうな、箸の綺麗な使い方。食べ方の綺麗な事。
そしてそれからは無言で、食べ進めて言った。口に運び、咀嚼をし、目を瞑り、それは噛みしめるよう。
悔しいけれど、上品な食べ方だ。わたしなら唐揚げ一口で口にいれる。
サラダはサラダで、何の野菜か確認した後、一口サイズを箸で取り、これまた味を噛みしめるように目を瞑る。
なんだ、こいつ、一体なんだと言うのよ。