【完】淡い雪 キミと僕と
そして、ハッと顔を上げた。

「アンタの母親は、シェフなのか?!」

「はぁ?!何を言ってるの?!ママはただの専業主婦ですけど」

「やはりシェフなんだな…」

「シェフじゃない!しゅふ!」

「いやいやこれはマジでうまいよ。唐揚げもサラダも…うちのホテルの料理長なんかよりもずっと美味しい。
それにホテル内に入っている数々の名店と呼ばれるお店よりも旨い」

何を大袈裟な。んな訳あるか。

「美麗ちゃんのお母さんを、ぜひうちの料理長として迎え入れたい!」

やっぱ馬鹿なのかな?

「もぉ~そんなの一般的な家庭料理でしょう~!
高級ホテルが作る料理のコンセプトとはそりゃー違うって話で…」

「でも…この料理はとても温かい。
いや、冷めてしまっているのだが、とても温かい味がする…」

「それはママがわたしやパパの為に心をこめて作った料理だかからじゃねぇーの?」

適当に言ったつもりだったが西城さんは腑に落ちたように「なるほど!」と感心していた。

馬鹿なんだか、純粋なんだか、この男ときたら。

食事中、雪は西城さんが持ち込んだ大きな箱の入ってるるであろう荷物を爪でガリガリとしていた。相手にされなくてつまらなかったのだろう。

彼は雪をひょいっと持ち上げて「こらこら、それはお前の玩具ではない」と言った。

「てゆーかそれ何?もしかして雪の玩具とか?
そんな馬鹿でかそうなもん買ってきて、邪魔になるだけなんですけど。なんてたってわたしの家は犬小屋並みに小さいですからね」


「いや、これはアンタへのプレゼントだ」

思いもよらなかったことを口にしたのだ。


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