【完】淡い雪 キミと僕と

「わたし、誕生日まだきてないけど?!」

「ああ、だって隼人を連れてきた時にお詫びの品を買うと約束しただろう?」

「あんなの冗談じゃん!」

「そうなのか?まぁせっかく買ってきたのだから、受け取ってくれよ。
アンタワンピースが欲しいといっていたが、中々良いのがなくてな。
まぁ見てくれ」

恐る恐る大きな袋に手をかける。

中からピンク色の箱が出てきた。これはッ!女の子大好きミュウミュウさんではないですか。勿論高くて、手は出せない。わたしの給料なんてすぐに吹っ飛んで行っちゃうよ。

だってここの靴って、1足10万以上するのはざらだしさ。

中からは、秋用のショートブーツではないだろうか。ベージュの使いやすそうな。シンプルではあるが、何ともお上品な造りだ。

「可愛いッ!」

「だろう。初めてアンタに会った時を思い出した。
アンタはバッチリとブランドのワンピースとバックに身を包んでいたが、靴だけは薄汚れていた」

「悪かったわね」

「靴はとても大切だ。見落としがちになってしまうが、よく目につくところでもある」

「だからってこんな高い物、申し訳ないわ…」

「いや、これは俺の謝罪だ。何も言わずに受け取ってくれ。別に金に物を言わせてってアンタの言うようなもんではないんだ。
高い靴は確かに良いかもしれない。けれど安い靴であっても綺麗に磨き大切にしてあげれば、靴は素敵な場所へ連れて行ってくれるという逸話がある」

確かに、靴をそこまで気にした事はなかったかもしれない。

見られるのは顔と上半身が大半だと思っていたから、この人あの時からわたしの靴まできちんと見ていてくれたんだ。


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