【完】淡い雪 キミと僕と
「そういえば西城さんの靴はいつも綺麗ね」
「おお、磨いているからな。
だからアンタにも靴磨きを買って来たぞ。後で磨いてやろう。安い靴でも大切にし、磨けば変わる。そういうものなのだ」
余りに純粋に彼が靴への愛を語るもんだから、心が少しずつ柔らかくなっていて
自然と「ありがとう」という言葉が口をついて出た。素直に、嬉しかった。これが高級ブランドのうん10万する靴だからじゃなくて
…いや、高級ブランドは嬉しいんだけどね。
例え、これが1000円の靴であったとしても、自分は同じ反応をしたと思う。…多分。
靴をそこまで意識した事は、確かに無かった。
それよりももっと人の目に映りやすい物を気にしていた。髪の毛とか、メイク。身にまとうワンピース。手に持つバック。分かりやすい物ばかり、気にしていた。
足元を見た事は余りなかった気がする。泥がかかっても、雨に降られても、何となく雑にしていた部分ではあって。
そういえば、彼が玄関でいつもきちんと揃えていた靴たちは、いつだって綺麗に磨かれていた気がする。
まるで始めから用意されていたように、その靴はわたしの足にぴったりだった。
驚き、視線を西城さんに向けると、彼は得意気な顔をして妖艶な笑みを浮かべた。
「何で?サイズ知ってるの?」
「そんなの、見れば分かる。この俺の手にかかればな」