【完】淡い雪 キミと僕と

そして上記で上げた苦手な女のタイプに、見た目以外山岡美麗は全て当てはまっていると言っても過言ではない。

出会った時から、こいつはヤバいと察知したものだ。

俺のステータスやお金に目が眩んだのは言うまでもないだろう。見た目もか弱く、男好きする、男が放っておけないタイプに一見見える。

それだけだったら良かったのだ。

美麗が本当に馬鹿で尻軽で男好きのただの軽薄なだけの女であったのならば、セフレくらいにはしてやった。しかしこいつは厄介な事に馬鹿で尻軽で軽薄そうに見えて、純粋な女なのだ。

それを初めのうちに見抜いておいて良かった。下手に手出しをせずにいて、心から安心している。

だって俺は、彼女が、井上晴人を一途に好きになっていく過程を見てしまっていたから。




「大輝、こちらが篠崎リゾートの社長、篠崎義彦(シノザキヨシヒコ)さんだ」

社長。つまりは父親から紹介された人物は、都内で多くの名のある飲食店を経営している篠崎リゾートの社長篠崎義彦さんだ。

父と、同じくらいの年齢だろうか。

どこか気品のある、ひょろりと痩せてはいるが大きく見えるような上品な人物だった。

白髪交じりではあるが整えられた短髪に、張りのある艶やかな肌。若い頃は相当モテただろう。いや、今でも十分過ぎるほど。

不思議なもので地位と名誉がある男性は、歳を重ねて行くごとに魅力的になったりもする。そういった人物は、必ずと言っていい程自信を兼ね備えている。

篠崎さんもまたそのひとりだった。

「やぁ、どうも。初めまして。
会長から噂はかねがね聞いているよ」

会長というのは、祖父の事をさしており、篠崎さんはこちらへ上品に笑いかけた。

「初めまして、西城大輝です。
いつもお世話になっております」


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