【完】淡い雪 キミと僕と
「それはとても嬉しい言葉だな。
一緒に行った素敵な女性が気になる所だが。きっと大輝くんほどの素敵な男性ならば、女性にもモテるだろうね」

「いえいえ、僕なんて」

「紹介したい人がいるのだが」

「紹介したい方、ですか?」

「雑誌を見てからというもの、君のファンらしくて、ね。
少し待っていてくれるかい?」

そう言い残し、篠崎さんは少し遠くにいる女性に声を掛ける。上品な白のワンピースを身にまとったその女性は白ワインを片手に、花のような笑顔を咲かせながら、篠崎さんの少し後ろを歩く。

隣にいた父がぼそりと「篠崎社長の一人娘だよ」と耳元で囁く。

女性は、篠崎さんによく似ていた。

気品に満ちた立ち振る舞いと綺麗な顔立ち。1ミリのずれも感じない笑顔も完璧な、映画に出てくる女優のような人だった。

「初めまして、篠崎菫(シノザキスミレ)です。」

「どうも、初めまして。西城大輝です」

「お会い出来て光栄です。わたし、ずっと大輝さんに会ってみたくって」

あぁ。誰かに似ているな、と思った。

若く、美しく、上品でいて育ちの良さが滲み出ている。でも嫌味がなく、顔をくしゃっとする笑顔を覗かせる。

純真で愛されて育ってきたのが分かる。

シンプルなワンピースと同じ色をした白いヒールは、汚れひとつなく、隅々まで磨かれていた。

可愛らしいお嬢さんだった。


「光栄です。」

「菫ときたら、私の雑誌を見ては大輝くんがかっこいいと言って、この仕事が決まったのを私より喜んでいてね」

「もうお父さんったら、止めてよ。恥ずかしいじゃない」

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