【完】淡い雪 キミと僕と
さっき出会った女の事を思い返していた。

篠崎菫。24歳。美麗と同い年か。

あれよこれよと連絡先を交換する羽目になり、今度食事にでも、とまで話は勝手に進んでしまった。

勿論篠崎社長と、父の公認の下で。

いつかこういう日が来て、自分はこういった運命の下に産まれた人間なのだとは分かってはいた。でも改めてこういう状況になると、自分の領域にずかずかと入り込まれたようで、非常に不愉快だ。

菫に不満がある訳ではない。賢く美しい女性で、きっと話していて楽しい人なのだろう。

一緒に過ごしていて、それは彼女の笑顔と同じで狂いもない時間で、傍から見れば、俺たちはお似合いなのだろう。

けれど、ひとつ不満があるとするのならば、彼女はほんの少しだけ美麗にタイプが似ている女性だという事だ。



似ているとはいえ、全然違う。

篠崎リゾートの社長令嬢と、たかだか零細企業の社長の娘とじゃ雲泥の差だ。

けれど、菫の持つふわりとしているが芯の強さがありそうな所は、少しだけ美麗と似ていた。

「何よ、もう。今日はおかしいわよ?」


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