【完】淡い雪 キミと僕と

小汚い子猫の行く末には興味がなかった。けれど、引き取ってしまった。

そしてこの子猫はこんなにみすぼらしく弱々しく痛々しく惨めなくせして、きっと強く生きたいと願っている。おそらく、あの中にいた兄弟猫の誰より。


さあ困ったもんだ。

そんな矢先、白羽の矢が立ったのはとあるひとりの女。
偶然な事に、この動物病院の近くに最近引っ越したばかりで、しかもラインで’ペット可なんだ!’と自慢げに言ってきた女がいた。


初めに言っておくが、この女は俺と恋愛関係やそれに不随した関係があるような女では断じてない。

女の名は、山岡美麗という。

容姿端麗で、某有名お菓子メーカーの受付嬢をやっている。…年齢は24、5歳と言っていたか?定かではない。

男が好きだと思う女の要素の全てを持っている感じの女なのだが、この世の中で俺が最も軽蔑する嫌いなタイプの女だ。


じゃあ何故そんな女と連絡を取り、プライベートなやり取りまでしているかと言うと、それはまた別の話になるので今回は控えておく。
こいつとは、陰謀めいた腐れ縁というか、まぁ俺の弱みのひとつを知っているような女なのだ。


女は子猫を見るなりあからさまに嫌な顔をした。

猫が嫌いだし、基本的に動物が嫌いだという。じゃあ何故にペット可のマンションに引っ越したなどと自慢げにほざいたのか。

こういった女の考えはいまいち理解に苦しむ。

取り合えず子猫はこの女に押し付けて、夜はこの女が面倒を見て、仕事に行っている間は俺が面倒を見る事で交渉は成立した、と思う。多分。

彼女は納得はしちゃいなかったが。


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