【完】淡い雪 キミと僕と
今日は雪に会いに行こう。
夜になってしまうけれど、あのふわふわで可愛らしい鳴き声に癒されたい。それくらいは疲れ切っていた。
しかし仕事を終えて美麗に連絡をしたら、まだ実家にいると何とも呑気な返信が着た。会いたくなったら今すぐにでも会いたいもので、美麗の返事を待たずして、家に迎えに行くと無理やり自宅の住所を訊き出した。
少しだけ迷惑そうにしていたが、仕事で疲れて実家まで雪を迎えに行き、また電車に揺られマンションまで帰るのは大変だろう、と言えば、二つ返事で了承してくれた。
ナビはとても優秀で、住所を入力したらあっという間に美麗の実家まで案内してくれた。
1台分空いていたから、勝手に2台分止まる駐車場に車を駐車し、インターホンを押していた。
箸を片手に持ち現れた美麗は、俺の姿を見て偉く焦っていた。
当たり前だ。
早く雪に会いたいからと言って、連絡をして10分で来るとは夢にも思わなかっただろう。
しかも勝手に車を止めて、インターホンを鳴らし、両親にとってもお’前誰?’状態だ。
そんな自分勝手な行動を慎めないくらいには疲れていたんだ。
「ちょちょちょ、何勝手に来ちゃってんのよ」
「あぁ、飯を食っていた時だったか、すまないな。
駐車場が空いていたから、車は駐車させてもらった。」
「え?!いや、そういう問題じゃなくて、勝手にそういう事をされたら困るっていうの、こっちにも事情っていうもんがあるんだから」
「おお、雪、元気か?この数日でまた大きくなったんじゃないか?!」
雪はリビングから急いで走ってきて、足元をぐるぐる回りながらすり寄ってきた。
相変わらず、可愛い奴だ。それとは対称的に美麗は偉く間抜けな顔をしたまま突っ立ていた。