【完】淡い雪 キミと僕と
「今、ご飯食べていた所なの」
「食事時に申し訳ありません」
「いいのいいの、全然気にしないで?
もし良かったら、一緒に食べない?今日はハンバーグなんだけど作りすぎちゃって。美麗にもパパにもいっつもママは作りすぎって怒られるのよ。
大輝くんはハンバーグ好きかしら?」
「はい、大好きです。…それにこの間美麗さんからお母さんの唐揚げとサラダを貰ったのですが…本当に美味しかったです。
感動しました。あんな美味しい唐揚げとサラダを食べた事はなかったので…」
「んまぁーッ嬉しい!!上がって、上がって。
パパー、美麗ちゃんがお友達を連れてきたのー!」
スリッパの音をパタパタと鳴らし、子豚のママはリビングまで駆けて行った。
何て癒し系のお母さんだろう。
自分はふくよかな女性はあまり好きではなかったが、ふくよかなお母さんは別だ。
しかし癒し系の母親と対称的に、娘と来たらどうだろう。ジトーとした目で眉をしかめこちらを見て、まるで’恨んでます’と言わんばかりに睨みつける。
「何て事してくれてんのよ」
「でもお母さんとっても喜んでいただろう。俺は基本的に女性の喜ぶ顔は好きなんだ」
「そういう問題じゃないってのッ!あれ絶対誤解しちゃってるってばぁ~ッ…。
もぉ~…面倒臭い事になりそうな気しかしないんだけど」
子豚のお母さんと、小さな小娘を脅すお父さん。
父親は少しだけ不機嫌な顔をしていた。これまた夜と同化してしてしまいそうな程真っ黒に日に焼けたガテン系の男で、ちっとも美麗には似てはいなかった。
父の威厳を保とうとしているのか、口を八の字に結び、厳しい視線をこちらへ向けてくる。けれど、その膝の上には雪が乗っていて、ニャンと鳴くたびにデレーッとつりあがった眉を垂れ下げる。
その様子を見てプッと吹き出すと、厳格そうな父親はこちらを睨みつけ「美麗とはどういった関係で」とドラマの台詞のような言葉を放った。