【完】淡い雪 キミと僕と

何だ、この夫婦は。

そして妙に和やかな気分になる。この気持ちは一体何なんだ?

子豚のお母さんも、小さな娘を脅すお父さんも、同じ顔をして笑っている。

それはまるで互いを映し合う鏡のようで、父親の膝の上にちょこんと座る雪も賑やかな雰囲気にとても嬉しそうだ。

何の変哲も無い一軒家は決して大きくもないし、ごちゃごちゃと散らかっている。

床に拡げられっぱなしで置かれた新聞も、ソファーの上に無造作に置かれた週刊誌。オレンジ色のカーテン。何枚も部屋に立てかけられている写真立ての中には美麗と夫婦の姿。仲の良さそうな家族写真で埋め尽くされている。

つきっぱなしのテレビは誰も見ていないが、この雰囲気にぴったりなバラエティー番組が流れていて、ダイニングテーブルには、所狭しと料理が並べられる。

美麗のお茶碗にはウサギの絵柄が優しいタッチで描かれていて、俺に出されたお茶碗にはクマのファンシーな絵がついていた。

こんな家庭を、俺は知らない。こんな温かい空気を、知らない。



湯気を上げている茶色の煮込みハンバーグ。

添えられている人参とジャガイモのグラッセ。青々とした旬の野菜を使ったサラダと、大根のお味噌汁。

そこからは温かい家庭の匂いがした。久しぶりにお腹が空いて堪らないと言った感情を思い出したんだ。

「んんッ!これは旨い!素晴らしいです」

「やだぁ~、大輝くんったらハンサムな上に褒めるのも上手なのねぇ~」


< 215 / 614 >

この作品をシェア

pagetop