【完】淡い雪 キミと僕と
「しっかしなんだァ?何で西城グループの御曹司と美麗なんかが…
こいつは我儘で馬鹿でどうしようもない奴でしょう?」
「美麗さんとは共通の知人を介して知り合ったのです
それに、美麗さんはとても優しい人です。今日お家にお伺いして、腑に落ちました。
こんな温かい両親に育てられたのですから、その理由がとても分かりました。
とても優しく、温かく、良い子です。僕は彼女にいつも助けられています…」
両親の手前だからと言って、それは社交辞令ではなく、心からの本音だった。
美麗は優しく、温かく、良い子だ。馬鹿なのは否定はせんが、そして彼女に、悔しいけれど、俺は助けられている。雪の事とか雪の事とか。その他もろもろ。
嘘をつくな、と言わんばかりに隣に座る美麗は顔を四方八方歪ませたけれど、話を聞いていた両親はまた同じ顔をして笑うんだ。
心から、美麗が羨ましいよ。こんな温かい両親の下で、愛され育った事が。
俺はきっと、家族の誰にも愛されていない。亡くなった祖母以外。会社を大きくする駒くらいにしか思われていないんだろう。
その日、何年かぶりにご飯のおかわりをした。記憶にもないほど久しぶりの体験だった。
ハンバーグも3つも食べ、サラダも味噌汁も残さずにたいらげた。
米粒ひとつ残さず。何といっても米粒ひとつ残せば、この父親に何を言われるか分かったもんじゃなかったし、美麗の母親である子豚の料理はとても美味しかった。