【完】淡い雪 キミと僕と

「ちょっと!!何て事してくれちゃってんのよ?!
かんッぺきにパパとママ誤解してくれちゃってるじゃないのよ?!
良い顔しちゃって、とんだペテン師だわッ。あなたは雪に八方美人だと言うけれど、そっちの方がよっぽどじゃない!」

雪、と名前を出されたのが分かったのか、膝の上で猫キャリーに入っている雪が嬉しそうに鳴き声を上げる。

…だから、アンタも褒めてるんじゃないってーの!

何をキャリーの中から大きな目を輝かせて、カリカリと爪を立てていると言うのよ。

「俺の、どこが八方美人だ。雪と一緒にするな」

ハンドルを握り、涼しい顔をした彼の横顔。何も悪い事をしたと思っちゃいないんだから、それどころか、何か楽しそうに鼻歌まで歌っちゃって。

「だから、何が優しく、温かく、良い子よ。
思ってもいない事がよく言えるものね?!」

「いや、思っているよ?」

「…何よ…。どうせ庶民の両親だと思って馬鹿にしてるんでしょう?いいこぶっちゃって…」

「全然。寧ろ素敵な両親だろう。
お母さんはとても元気があって、少しふくよかだが優しい。それにやっぱり料理上手だ。俺がご飯をおかわりするのは、記憶にないほど久しぶりの経験だった。
それにお父さんも面白い人だ。厳格ぶっているが、ありゃお母さんにいつも尻に敷かれているのだろう。容易く想像出来る。俺の車に興味津々だったぞ?今度運転させてくれと言ったから、快く了承した。
それに、ふたりともとてもアンタの事を大切に想っている事がひしひしと伝わる。それのどこを馬鹿にすると言うのだ?
アンタの子供の頃の話も実に興味深く、聞いていて楽しかった」
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