【完】淡い雪 キミと僕と
そりゃー野球観戦のチケットくらい…。
西城さんに比べれば零細企業であっても、パパは一応社長なのよ?アンタみたいな青二才にお金を出させる訳にはいかないじゃないの。
あんなパパにだって一応プライドってもんがあるのよ。
収入的には西城さんの方がずっと上だろう。
それでもパパはまるで自分の息子のように西城さんを可愛がっていた。息子も欲しかったっていうのはあながち嘘ではないのだろう。
そして彼も彼で、パパと出かける時は何故かとても嬉しそうなのだ。
全くお坊ちゃんの考えている事は分からない。…けれど、わたしの両親を素直に好きだと言い、ママの料理を’美味しい’と何度も繰り返し言いながら食べて、パパの趣味に嫌な顔ひとつ付き合ってくれるのは…こっちだって素直に嬉しいものなのよ。
だって、わたしだって自分の両親を誇りに思うところ、あるもの。
パパのような人と結婚したくない、と口では言っていても、心の底では両親を尊敬している自分がどこかにいるから
わたしの好きな人を、大切にしてくれる事。嬉しくない訳ないじゃないの。
「でも、あんまり無理しないでね?西城さんだって忙しいんだから、忙しい時はハッキリと断らないとパパってば強引なんだから」
「大丈夫だよ。美麗パパもそこは気を遣ってくれるんだ。それにしても美麗パパは多趣味だなぁ。今度は魚釣りにも行こうと言われたぞ」
「そうね、パパは昔からどちらかと言えばアウトドア派の人だったから。思春期の頃は一緒に出掛けるのがとても嫌だったの覚えてるわ。
それに、あの人元ヤンなのよ…」
「おぉ!何か車の中で延々と若いころの武勇伝を話してくれる」