【完】淡い雪 キミと僕と
「ん~、やっぱり狭いと思うけど。って、アンタ顔が赤くなってるけど大丈夫?
ねぇ熱でもあるんじゃ…」
視界が彼女のドアップになり、その唇のグロスまで鮮明に映し出され、右手がゆっくりと額まで伸びてくる。
身体は温かいくせに、手のひらはひんやりと冷たく、思わず身を引いてしまった。
この西城大輝、一生の不覚。
「すっごい汗だけど…本当に熱でもあるんじゃあ。体温計持ってこようか?」
何を、平然と。
これじゃあからかってやってる筈のこっちがからかわれているみたいではないか!
ふわふわのベッドから起き上がり、足音を立てながらソファーへと戻る。 雪がソファーの端からちらりとこちらを見ていた。
…なんだ、お前まで。覗きが趣味なのか?それは男としてどうかと思うぞ?
’何よぉー’と文句を言いながら、美麗もこちらへ戻ってくる。
体が火照る。本当に熱でもあるんじゃないのか?そう思いテーブルに置かれた水をがぶ飲みする。そんな俺の様子を美麗は訝し気な瞳でジーっと見つめていた。
冷えた水が体をすり抜けていって、熱は徐々に収まっていくようだ。
それと同時に心臓の鼓動も少しずつゆっくりと時を刻むようになった。
右腕で汗を拭い、笑顔を作り直した。まさかこの俺が、美麗如きにドキドキする筈がない。
「何を、勘違いして」
「ハァ?!」
「ベッドまで来て、からかってやったつもりなのに、本気にして。
まさか俺がアンタと寝る訳ないだろう。何を期待している」
「何も期待なんかしてないから!」