【完】淡い雪 キミと僕と
さっきまでの美麗に戻り、ホッと一安心。
まさか俺がドキドキしていたなんてバレちゃいないな?
全く、最初から泊る気なんてないのだ。
「平気だ。車は置いておけばいい。タクシーを呼んで家に帰ればいいだろう?」
「あ、そっか…。全然考えつかなかった」
「何を落ち込んでいる?まさか本気で俺に泊まっていって欲しかったとか?」
「そんな訳あるかッ!もう人をからかってばっかり!ムカつく!」
俺はきっと、琴子の事がとても好きだった。人生で初めて本気で好きになった女だから。
だからこそ、痛い失恋をしたと思っている。忘れる日はないと思う。けれど、さ
あの恋を思い出にして、琴子と井上晴人の幸せを今願えるのは、雪のお陰。
それに、美麗ママの料理が美味しくて、食事が人の体を作るのって本当なんだな。美麗パパも息子が出来たみたいだ、と可愛がってくれている。あの人の前では自分が子供に戻ったようにワクワクするんだ。
そして、君がいてくれたから。
間違いなく、君がいてくれた事が大きかった。
今、俺が笑っているのだとすれば、それは君のお陰だ。間違いない。悔しいから絶対に口に出して言ってはやらんがな。
からかえば、その倍反応してくれて、怒ってばかりいるかと思えば、時々物凄く優しい。その瞳から流れる涙は、どこまでも曇りなく純真だ。
君がいてくれて、良かった。
こんな毎日をプレゼントしてくれて、ありがとう。あの頃はずっとこの時間が続いてくれたら、と願った。
でもきっと別れの日は来る。
どんな物語にでも終わりがあるように。その日を想像したら、それは想像以上に寂しかったんだ。