【完】淡い雪 キミと僕と

この場所で西城グループの社長令息はステータスになる。

けれどもしも俺がただの普通のサラリーマンだとしたら、女は誰一人寄り付かないだろう。

金は偉大だ。家柄も。馬鹿馬鹿しくなるほど、空っぽな自分が偉大な人間にでもなったかと錯覚させてくれる。クソ下らない物だ。



美麗とは早く切り上げたくて、社交辞令で今度食事でも、と言ったら彼女が一瞬ニヤリと嫌な笑みを浮かべたのを見逃さなかった。

ワインの美味しい店が、と言ったら、嬉しいですと犬みたいに尻尾を振って、こちらに媚びた。
連絡先を交換して、その場は終わった。

1回くらい遊んでやる事も出来た。生まれながらの美貌は神様からの贈り物とでも抜かして、馬鹿な男を何人も引っかけてきたであろう。

けれどさっきも言った通りこの程度の女など、その辺にゴロゴロと転がっているのだ。


しかし何故か1年の歳月を経て、俺はこの女に猫を預けて面倒を見てもらおうとしている。その理由は何かと問われれば、それはまた別の話になる。

とりあえず幾ら時間が流れたとはいえ、世界で1番苦手な女がこういった山岡美麗という類の女であるのに変わりはない。


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