【完】淡い雪 キミと僕と

それはきっとまだまだ先の話になりそうだ。

どう見えても仲良くなれそうなタイプじゃないけれど、わたしはとても捻くれ者だから、ああいった素直な女の子とは’友達’にいつかなれるかもしれない。

本当の友達がいない、こんなわたしと彼女が仲良くなってくれるかはまた別の話だが。

それにしても、あなたは相変わらず鈍感で無神経な人ね。

誰にでも優しい微笑みをかけて、良い顔をして、振った女にも律義に琴子さんと付き合った報告をして。

でも、わたしはあなたのそんな誠実な所を好きになったの。

だからもう少し時間が過ぎて思い出を優しく振り返れる時が来て、痴話喧嘩なんて起こってしまったら話くらいは聞いてやってもいい。その時はもっと自然な笑顔であなたと琴子さんの物語、きっと聞ける気がする。

「相変わらず無神経な男だな」

今日も今日とて、相も変わらずなのはアンタの方だ。

わたしの仕事終わりをまるで目掛けてきたかのように、家の前に立っていた。

合鍵を無理やり奪っているのだから勝手に入ればいいでしょう?と言ったら、俺だって今着いた所だ。といつもの様子で悪びれなく言う。

そして’美麗ママのご飯を食べに来た’と。

ママが実家に行くたびにお家で食べてね、と西城さんの分までかなりの量のお惣菜を持たせるのだ。今日もそのようで、ソファーで雪とじゃれ合いながら’飯はまだか’と偉そうにふんぞり返っている。

ひとり暮らしを始めてから数回しか使っていない炊飯器は近頃大活躍だ。

お米をとぐ事さえ数回しかした事無かった自分にとって、上手にお米が炊けただけで料理上手になっている気分になる。

まだ家で料理をしようとは思わないが、そのうちしてやってもいいとさえ思っている。


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