【完】淡い雪 キミと僕と

コンビニや外食ばかりだと体に悪いから。それは自分の為だという事を決して忘れないで欲しいけれど。

まさかアンタに作りたいからとかそういった理由は1ミリも無いと。

わたしが苦手な筈の料理を始めたら、自分の為だと勘違いだけはしないように釘をさしておこうと思う。

「井上晴人との事ならば、琴子に少し前に聞いた」

今日会社で井上さんに会ってふたりが付き合ったという事を報告した。

言ってしまった後に不味かったかなと思ったけれど、彼は平然とした顔で’もう知っている’と言う。

そしてアンタにいちいち報告するとか無神経な男だな、と暴言を吐く。あの男は女心が分かっていないとか、少し背が高いからって生意気だ、とも。

まだまだ琴子さんの事を引きずっているのではないかとも思ったけれど、案外あっけらかんとしていた。

そして琴子さんから聞いた付き合ったという話を、こいつは今の今まで秘密にしていたのだ。

…それはきっと、わたしの事を思って。悔しいけれど、こいつにはそういう所がある。

「井上さんが今度雪を見たいって言っていたわよ」

「絶対反対だね。あの男に会わせたら雪が穢れる」

「もう、アンタって何でそうなの?井上さんは猫好きだもの、きっと雪もすぐに懐くわよ」

「うるさいなあ。雪は誰にでも懐くんだ。節操がない。…こいつは馬鹿猫なんだ、基本。
それに万が一…いや、奥が一…俺よりも井上晴人に懐くような事があれば…それは許せない…
そんな事、絶対にあってはいけない事なんだ」


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