【完】淡い雪 キミと僕と

「菫さんって、女性よね?」

「菫さんが男な訳があるか」

口調も声のトーンもすっかり元通り。いつもの生意気な奴のまんまだ。

「へぇ~なんか親密そうね。わたしには関係のない事だけど」

あえて、自分には関係ない、を強調した。

「別に親密って訳ではないんだけど。
許嫁って奴か」

「いいッなずけ?!」

余りの驚きに、思わず声が裏返ってしまった。

そんなわたしを、やっぱり彼は変な顔をして見てくるから。

「俺にもよく分からん。でも祖父や、篠崎社長はノリノリのようだな…全く頭が痛い…」

彼のおじい様と、おそらく篠崎社長というのは、菫さんという方のお父様か何かなのだろう。

「篠崎社長?」

「ああ、今事業提携をしている会社の社長の娘さんでな。篠崎リゾートって知らないか?手広く事業をやっている会社なんだが…
ノエールっていう店が有名かな、アンタの好きそうな所で言うと」

「ノエール?!あの六本木にあるスィーツが有名なカフェのこと?!」

「そうそう。いかにもアンタのような見た目だけ華やかなスィーツが好きそうな女に人気の店だ」

ノエール。ノエールと言えば、とても有名店だ。SNSでもよく見る。

有名パティシェがいて本格的なケーキと併設するカフェではパンケーキやパフェなんかも人気。
篠崎リゾートという名も聞いた事があるような気がする。

そして菫さんという方は、わたしなんかとは全然違う社長の娘。たかが零細企業の社長令嬢なんかではなく、大企業の社長令嬢に決まっている。


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