【完】淡い雪 キミと僕と
彼が自分の体をこちらへ近づけてくる。
キス、してしまいそうな程、近く。吐息がかかってしまうんじゃないかと思って、思わず息を止めた。
そして、一重に見える瞼に人差し指を置いて、ほらと見せつける。
一重か奥二重かは、実はどうでも良かった。彼の切れ長の瞳。繊細な顔が近づいてきて、心臓の音が聴こえてしまうんじゃないかって程近い。
毛穴のひとつ無さそうな程、綺麗な肌で、恵まれた容姿。
クールで怖そうに見えるのも彼の繊細の顔立ちを前にチャラになってしまう位世間一般的に言えばかっこいいタイプの男なのだ。
そんな男に突然近寄られたら、わたしじゃなくても動揺してしまうはず…。
「えぇ、あなたは奥二重よ、認めるッ…認めるから、顔を離して頂戴」
これ以上は限界よ。けれど彼は顔を離す素振りも見せずにジーっとその切れ長の瞳でわたしを見据えるのだ。
「アンタは目が綺麗だ」
そんなドラマや映画のような言葉を、どうしてさらりと言えてしまえるというのだろう。
こっちの気も知らずに。
「大きくて、綺麗な二重でフクロウみたいだ」
「それって褒めてる?!」
「褒めている。アンタは目だけは美麗パパ似だ。この間ふと思った。
全体的には美麗ママに似ているが、くっきりとした二重は美麗パパによく似ている。
とても綺麗な目だと思ってる」
人よりも少し大きな目が、小さい頃嫌だった。小学校の頃男子に’出目金’とからかわれた事があった。
でも大きくなったら、この目はよく褒められた。カラコンなんてしていないのに、どこのカラコン使ってるの?と訊かれた事もあった。
だからその自分のチャームポイントを素直に褒められるのは、素直に嬉しい。