【完】淡い雪 キミと僕と
美麗の家は1Kのこれといって特徴のないマンションだ。綺麗でも汚くもなく、新築でもなけりゃ古くもない。
まぁ、たかだが巷では一流と言われている有名企業であっても何の肩書もない受付嬢。
妥当なところか。
可愛らしい小物が置かれているけれど、所々散らかっていて、取り合えず見えるところだけ綺麗にしていれば良いという魂胆が見え見えなのだ。
やっぱりこいつ、かなりガサツな女だな。
無言で部屋を物色していると、昨日のまんま、汚い段ボールから子猫が「みゃあ」と顔を出した。
「おぉ、おはようございます」
何故か敬語。
それに応えるように子猫はみゃあみゃあと何度も鳴いて、小さな手で段ボールをカリカリとして必死に上に上がろうと藻掻く。
段ボールの中には、可愛らしい花柄のブランケットが敷かれていて、そこに小さな簡易トイレが隣り合うように並べられる。
ピーピーぎゃーぎゃーと文句を言いながらも、きちんと世話はしてくれているらしい。
子猫を片手で抱き上げると、お腹に乗った子猫は嬉しそうにゴロゴロと転がっていく。
そして、俺のお腹の上を、小さな前足と後ろ足を使い踏みつけている。
何だこれは?!
「何かふみふみらしいよ」
「ふみふみ?!」
小さく、ゴロッゴロッと喉を鳴らしながら、一生懸命お腹の上を踏みつけている。