【完】淡い雪 キミと僕と
8.大輝『お前が思っているような子ではない』
8.大輝『お前が思っているような子ではない』
菫の友人だという女優さんが出ているミュージカルは圧巻だった。
余りミュージカルといったものには興味が無かったが、興味がない物でも生で見ると感慨深いものがある。野球観戦もそのひとつだった。
関係者席で隣に座る菫は、驚いてみたり、笑ってみたり、感動してみたり、実に感情表現豊かで、ミュージカルを楽しんでいた。
彼女の友人だという女優さんは、俺でも顔を知っているくらい中々に有名な方で、観劇が始まる前楽屋にも通してくれた。
初日公演だと言っていた。関係者席から客席を見て見ると、所せましと人が埋まっている。中々前評判の良いミュージカルらしい。
何でもない土曜日。彼女の為に、休日を空けた。
「どうでしたか?」
「いやぁ、ミュージカルを生で見るのは初めてだったんですが、中々に躍動感があって素晴らしいですね。
それに、とても楽しかったです」
「大輝さんに喜んで貰えて嬉しいです」
観劇を終えた後には、彼女の父親が経営する「とりごや」へ食事に来た。
ここの料理は中々。
何回か女性とのデートで連れてきた事があった。
日本料理なのだが、どこか風情のある作りであって、出てくる料理もどれも美味しい物ばかり。…まぁ、美麗ママの料理には負けるが。
「それに、やっぱり篠崎さんのお店は美味しいですね。
店構えもとてもホッとする」
「褒めて貰えて父も喜んでいると思います。父も自慢のお店みたいだから」
「菫さんは、ノエールの方を手掛けていらっしゃるんですよね?」
「えぇ。わたし自身がスイーツが大好きだから、若い女の子たちが喜んで貰える少しお洒落なお店を作りたくって。
あそこのタルトもとても美味しいんです。大輝さんは甘い物、好きですか?」
「えぇ、とても」