【完】淡い雪 キミと僕と
嫌いだ。

甘いものは、苦手だ。

昔琴子が作った激甘のバレンタインチョコレートを食べた。琴子が作ったもんだから無理やり食べたけれど、やっぱり甘いものは好きになれない。

ノエールは、女性に人気のカフェが併設されているケーキ屋さんで、海外でも活躍する有名なパティシェがプロデュースしたお店なんだとか。

その事業に、菫も関わっている。

彼女は父親の仕事を手伝っていて、若いけれど、仕事も出来る女性だと評判だった。仕事の話をする菫はキラキラと輝いていて、お嬢様なのに珍しい子だな、とは思った。

きちんと自分の意見があり、意思も強い。

別に仕事なんかしなくとも生きてはいけるだろう。それでも、仕事が好きだと言う。港区で適当にOLをやって日々愚痴だらけの女に爪の垢でも煎じて飲ませてやりたいくらいだ。

「それに、ノエールは友人も行っているみたいで、素敵なお店だと言っていましたよ」

ふと、美麗の顔が浮かんだ。味なんてきっと分かっちゃいないんだろう。

美しく盛られた可愛らしいデザートプレートを写真に写しSNSで公開するのが、ああいった人種にとっては大切な事だ。

…まぁあいつはそういったSNSの類は辞めたらしいが。

「へぇ~、友人って女性かしら」

「はぁ、まぁ…。ただの友達ですけど」

「大輝さんの事ですもの、親しくしている女性の方なんて沢山いらっしゃるでしょうね」

「僕は…そんな…」

「絶対にモテるでしょう?」

「いやいや、菫さんほどではないですよ」
< 271 / 614 >

この作品をシェア

pagetop