【完】淡い雪 キミと僕と
「わたしなんて、全然。大学までずっと女子高育ちで、そういった事は余り…
それに学生時代は音楽ばかりやっていたんですよ。」
「あぁ、だからミュージカルに」
「えぇ、ミュージカルとかも好きですけど、コンサートとかもよく行くんです。
ずっとフルートを習ってましたから」
「それはとてもお似合いだ。是非拝見したいものですね」
「本当ですか?今も趣味でやってはいるのですが、発表会とかもあるんですよ。もし良かったら」
「是非」
美味しい料理に、菫の話はまあまあ楽しかった。
よく笑うけど、どこか身のこなしが上品で
儚そうに見えて、芯が強い。張りぼてでない、彼女のどこか自信のある立ち振る舞いは、育った環境によるものだろう。
’また是非お会い出来たら’と。’そして最後に今日はとても楽しかったです。’と丁寧にお礼を言った。今日も彼女の足先はとても美しかった。
しかし疲労感。
この疲労感は何だ。酷く疲れた。美麗の前みたく彼女に毒づく事も出来ず…まぁ毒づく箇所なんてない程の完璧な女性なのだけど。
だらけた態度も勿論取れない。
美麗の前でならば、幾らでもだらしのない自分を見せる事は出来たのに。基本的に女の前ではかっこつけたいのが男の性であり、かっこ悪い所を見せるのは恥ずかしいものだ。凛と立っていたいものだ。
だから、それは美麗に見せる自分が特別な訳ではなく、彼女は俺にとって’女’ではないのだ。
だから、あんなに癒される―のだろうか。
ハッ!癒されるとはそういった意味ではない。絶対に無い。
だって今更美麗の前でかっこつけたとて、彼女の俺への評価は変わらないだろう。