【完】淡い雪 キミと僕と

それにしても疲れた。

何故か菫に会った日は雪や美麗に会いに行く気にはなれなかった。

かといって隼人に愚痴を言おうもんならば、また美麗になんやかんや関わられて、彼女をまた怒らせたらそれはそれで大変だ。

こういった日は決まって女に逃げるに限る。

菫を家に送り届けた後、首都高に乗りとあるマンションに向かっていた。

「また、偉く突然ねぇ。
連絡ぐらいしてよ。そんなに暇じゃないんだから」

「あぁすまないな。突然君に会いたくなったりもするもんだ」

「口がうっまいの~!
まぁ入って、入って。最近はあんまり外に出歩く気分じゃなくって」

友理奈は突然でも快く家に通してくれる。

こういったフットワークの軽さはとても楽だ。

そして何故か家に入りソファーに座るなり、愚痴を漏らし始めた。この愚痴さえなければ…。まぁ、仕方がない。少し話を聞いてやれば簡単に股を開くと言うのならば、それくらいは容易い。

君はセフレとしてとても優秀な人間だよ。今度欲しい物を何でも買ってあげよう。そうすれば、暫く機嫌の良い日は続く。実に結構。

「今ね、炎上してるの。
そんで、化粧品とか企業からの案件を貰っていたのだけどそれもパアッて訳」

「炎上?」

「だからネットで炎上してるの!あたし!」

美しい女性が怒ると、醜く顔を歪ませる。そういった顔は苦手だ。女は素直に笑っている方がずっと美しいというのに。

ヒステリックな女は嫌いなんだ。

自分の母親で嫌って言う程見てきたから。けれど友理奈は顔をしかめて、組んだ細い足を床に揺らし、右手に持った煙草を灰皿の縁に何度もトントンと叩きつける。

ネットの炎上。きわめて興味のない話だ。でも適当に相槌を打って聞く振りをする。


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