【完】淡い雪 キミと僕と
まぁ目の前で怒り狂っている女には、何を言っても伝わらないと思うが。
「まぁ、そんなに怒るな。
友理奈が人気あるから嫉妬だろう」
「嫉妬なんて分かってるわよ。ネットの人間なんて馬鹿ばっかりなんだから」
いや、君も相当。
馬鹿な女は嫌いではないけれど、ヒステリックになって当たり散らす女は非常に不愉快だ。馬鹿の癖に人を馬鹿にしている女も嫌いだ。
俺だって疲れているのだ。ここには癒されに…そしてほんの少しの性欲を満たすために来ているのに、萎えるような事ばかり言うな。
やれやれと言った感じで、友理奈に自分の携帯を向けて、とある動画を見せる。それを見た友理奈は変な顔をして、ますます眉間に皺を寄せた。
「何、これ。馬鹿にしてんの?」
「いやぁ、可愛いだろう?」
「動物なんてちっとも好きじゃないし、可愛くない」
携帯の画面の中で、雪がひとりでボール遊びをしていた。
飽きずに飽きずに、それは何度だって。
「大輝くんが動物なんて笑えないんだけど、何よ小汚い猫ねぇ」
そう言って彼女が俺の携帯を奪い取る。
動画の中の雪はとても無邪気で、人間の持つ汚さなんてちっとも見当たらない。
画面を見つめ、更に彼女の貧乏ゆすりが酷くなり、煙草を咥え片手で俺の携帯を揺らした。
突然、ぴたりと貧乏ゆすりが止まる。
それと同時に、画面からは美麗の高い声が流れ始めた。
「雪ー!」小さな子猫を呼ぶ、とても甘い声だった。どうやら友理奈は違う動画を再生してしまったようだ。何となく面倒な事になる。嫌な予感がした。