【完】淡い雪 キミと僕と
「猫ってお母さんのお乳の出をよくするために前足でふみふみ揉みながらおっぱい飲むみたい。
そういう幸せな感情や感触を思い出してふみふみするみたいだけど。まぁネットで調べた情報によると、だけど」
美麗は洗顔を終えて、段ボールに入っていたブランケットとお揃いの花柄のタオルで顔を拭きながら言った。
しかしスッピンと大した顔の変わらない女だ。一般的に言えば、かなり可愛い部類に入るのであろう。
「こいつ、お母さんに育児放棄されたんだぞ?!
そんな幸せな感情なんて覚えちゃいねぇだろ」
「アンタ酷い事ばかり言うのね。それでも子猫はお母さんが大好きだから、何度煙たがられても必死に喰らいついていってたんじゃないの?
まぁ、知らんけど」
なんつー健気な生き物だ。
目を線にして俺のお腹を踏みつけるその顔は正に幸せそのもので
この生き物がみすぼらしくあればあるほど、切なくなる。
「それにしても、西城さん、本当に平気なの?」
美麗はテーブルに並べられた化粧水を顔に塗りたくりながら言う。
つーか…、数えきれないほどのガラスの瓶が並んでいるが、それを全部顔に塗りたくるっていうのか?
女つーのは本当に面倒くさい生き物……いや、大変な生き物だ。
「平気だよ。まぁ、別に俺ひとりいないところで会社は回るだろう。
社長の息子って事でただでさえ甘やかされているんだから。
事務仕事はパソコンさえあればどこでも出来る。俺の仕事なんてそんな物だ」