【完】淡い雪 キミと僕と
『炒飯?作れるのか?中華だぞ?』
中華だぞ?はいまいち謎だが…。
『アンタに作るなんて一言も言ってない。
仕事終わりに何か食べて来たらいいんじゃないの?』
『アンタの炒飯なんて腹を壊しそうだな。それは余りに未来の旦那が不憫だ。仕方がない。毒見というものをしてやろう』
携帯を持ちながらキッチンに美容ドリンクの空の瓶を置く。
雪もご飯を食べ終わったようで、こちらにやってきてわたしを見上げ「ミャ~」と甘えた声を出した。
ふと鏡に映った自分が笑っている事に気づく。違うのよ?これは雪が上目遣いでわたしを見上げた姿が余りに可愛かったもんだから、ニヤケてしまっただけ。
彼とのメッセージのやり取りで笑っていた訳ではない。…ないのよね?って、何を自分に言い聞かせてるんだか。
その可愛げのないメッセージには返信せずに、着替えて会社に行く準備をした。
仕事を終えたら早急に炒飯の準備に入らなくては。料理初心者のわたし、材料を切る作業にだって時間がかかるんだもの。
そしてそれを彼に毒見させて、朝方に着た『アンタのせいだ』の理由を聞こうじゃないか。
「はい、営業の高瀬ですね。
少々お待ちくださいませ。」
「あ、千田ちゃん!わたし会議室の予約しておくから。
このデータ入力もやっておくね?」
いつもに増して、仕事のやる気がみなぎってくる。
「山岡さん今日はなんか元気ですねッ」
「あ!そうだ!千田ちゃん、今度の土曜日暇?良いカフェ見つけたんだけど一緒に行かない?
ってわたしもあんまり行った事ないんだけど、スイーツが美味しいんだって」
’スイーツ’という言葉に千田ちゃんは目を輝かせた。女の子は誰だって可愛い食べ物が好きよね。