【完】淡い雪 キミと僕と

「行きます~行きます~!どこですか?」

「ノエールっていうお店なんだけど」

「わぁ!知ってますッ。行ってみたかったんですぅ。お洒落なお店だから自分なんかって思ってたんですけど…なんか山岡さんと一緒なら心強いし
後山岡さんにお洋服選んで欲しいんです~!」

「もちろん!あ、もしかして例の彼と今度デート?」

「えへへ。そうなんですよぉ。
わたしがお洒落をしたって大した変わりはしないと思うんですけどね。
でも好きな人の前では少しでも可愛い自分でいたいじゃないですか~」

頬を赤らめ、笑う千田ちゃんは可愛かった。素直に自分の想いを口に出来る所も、わたしにはもっていない素直さだ。

千田ちゃんのように素直にずっと笑ってられるような女の子だったら、西城さんも嬉しいものなのかしら。いや…きっと’気持ち悪’って言われるのがオチだ。



その日はやけに仕事が捗った。

楽しみがあるとやけに仕事に意欲が沸く。わたしじゃなくっても出来る仕事だけれど。

あ、そして楽しみというのは千田ちゃんと一緒にノエールに行ける事よ?まさか西城さんが夜に来る事が楽しみな訳じゃないから。

定時までに仕事をきっかりと終わらせ、満員電車に揺られて帰る。

涼しくなってきたせいか、今日の満員電車はそこまで苦ではないわ。夏までは汗だくの人と腕と腕があたってしまったり、非常に不愉快だったから。

鼻歌まで歌っちゃってマンションに着き玄関の扉を開けようとした時、だった。…家が開いている。慌てて扉を開けると、そこには。


< 283 / 614 >

この作品をシェア

pagetop