【完】淡い雪 キミと僕と
「ちょっといきなり背後に立たないでよ!びっくりするじゃない!包丁があるのよ?!」
「すまんすまん、何かえらーく集中してるもんだから。おおお、野菜の切り方が斬新だな?」
みじん切りとは、決して言えない。思っていたよりずっと大きくなった人参を手に取り、彼が大袈裟に言う。
「うるさいなぁー…あっちに行っててよッ!」
それでもなおも、彼はわたしの後ろに立ち、料理を観察していた。観察と言うよりかは監視か?!
さっきまで寝ていたかと思った雪も近くまで来て、大きな目を見開いて観察中。
フライパンに油を落し、野菜を入れると途端にジュッと跳ね上がる。ヒィ!火怖い。
「ちょっと、雪が危ないからあっちに連れて行ってよ!あッ熱ーーーー!」
「おいおい、大丈夫か?本当に食える物が出来るのかよ」
雪を小脇に抱え、西城さんはリビングのソファーに移動した。
「あぁッ卵が先だった。つー!あっちぃ!!」
取り合えず、取り合えず、炒めればいいのだ。えーい面倒くさい。卵の野菜も全部一緒に入れてしまえ!
何とかなる。きっと。けれど、出来合った炒飯は、昨日ママに教えて貰った物とは偉い違いだった。
ママの炒飯はもっとパラパラしていて、なのに全体的にふんわりとしていて、彩りも綺麗だった。
なのに、わたしと来たら。
「……。」
「……。」
「ミャー!」
雪だけが嬉しそうにソファーをカリカリと爪とぎしている。
そうね、あなたの言いたい事は大体分かるわよ。顔を見れば、ね。
確かにこの炒飯は焦げているし、べちゃべちゃでとても見栄えが悪い。どう見ても美味しそうには見えない。
それでも彼はいつものように床に正座し、手を合わせ’いただきます’と言った。