【完】淡い雪 キミと僕と
冷蔵庫からペットボトルに入った2リットルのお茶と洗い立てのコップを、わざと音を立てて乱暴にテーブルに置く。
わたしのその行動に、男は眉をしかめた。不服だ、とでも言いたげに。
不服なのは、こっちの台詞だ。
いきなり夜も更けた時間に電話を掛けてきたかと思えば、人の都合も聞かずに’今から家に行く’と言って、いきなりこんな小汚い子猫を渡されるなんて
人の都合つーもんを考えちゃいない。いや、考えていたのなら、こんな行動は取れるまい。
そもそもだ。
そもそも、わたしは猫が大嫌いなのだ。
何を考えてるのか分からない、気まぐれで、人の気持ちなんてお構いなしで自我をぶつける我儘な生き物。
しかもこんな小汚い。
段ボールの中を覗くと、その猫は「ミャーミャー」とピアノの高音の音色のような鳴き声を出し、こちらへ目で何かを訴えかける。
玄関先の大荷物。
男はそれを指し、「必要な物は一通り買ってきた。何か足りない物があるなら都度連絡をしてくれ」と言った。
何を言っちゃってるの?全く説明になっていないのだが?!
「お腹空いてるんじゃねぇか?
ミルクくらいやれよ」
だから、何でわたしが。
だるそうに立ち上がった男は大荷物の中から猫のミルクらしき物を手に取った。
そして赤ちゃんがミルクを飲む時のような、小さな哺乳瓶。そしてスポイトのような物まで