【完】淡い雪 キミと僕と
10.美麗『昨日の事はお互いに忘れましょう』
10.美麗『昨日の事はお互いに忘れましょう』
夢であって欲しい。
山岡美麗、一生の不覚。
チュンチュンと雀が楽しそうに鳴く声が窓ガラスの外から聴こえる。
カーテンの隙間からは強い日差しが降り注ぐ。昨日あんなに雨だったというのにすっかり晴れ模様だ。
行き場を失くした雪が不満そうに、床の上に置かれた猫ベッドで丸まっている。いつもならばベッドで雪と一緒になるのに。やっぱりなんか拗ねている?どこか不満そうにしている。
わたしのベッドでは、裸になって寝息を立てる西城さんの姿。
…わたしも裸。つーか脱がされた。仲良く隣り合って眠っているから、雪の寝るスペースは無し。
西城さんの右手がこちらへ伸びて、わたしの頭はそこにすっぽりと包みこまれる。
昨日のわたしはどうかしていた。それよりもっとどうかしていたのは西城さんの方だったが。
いきなり雨にずぶ濡れのままやってきて、そのまま抱きしめられて、そしてキスをされ
あれよこれよという間に押し倒されていた。あの時の彼の顔は今までに見た事も無い程辛そうで、’美麗助けてくれ’と初めてわたしの名を呼んだ。
今まで冗談で’美麗ちゃーん’と呼ぶことはあっても、あんな真剣な顔をして美麗と呼ぶことは無かった。かといって、これは無かっただろう。