【完】淡い雪 キミと僕と
白いシーツには、生々しい血痕。昨夜あった出来事が夢ではなかったと思わせる。
別に大切に守ってきた訳ではないし、結婚するまでは処女でいるの!なんて思った事もない。だけれど、まさかこんな形で…。
初体験を迎えてしまうとは…。しかも相手が西城さんなんて…。
これは強姦よ。
とは考えてみても、絶対に違う。あんな弱々しい西城さん、殴って蹴り飛ばせばいくらだって拒絶する事は出来た。出来たのに、それをしなかったのは、わたしだ。
わたしが彼を受け入れた。
死んだように眠る彼の額を少しだけ触った。何度も指でこしょこしょすると、う~んと唸りながら左手の指で顔を掻く。
そしてうっすらと目が開くと同時に、わたしは彼の身体に顔を伏せた。
「ん~…今何時だぁ?つー…腕が痛ぇー…」
西城さんの声に反応したのか、雪がベッドへジャンプし、彼の顔に鼻先をくっつける。
「お~…雪~…おはよ~。朝から元気そうだな」
わざとらしくスースーと寝息を立て、狸寝入り。けどそんなのはバレバレだったようで、彼はわたしの脇腹をこちょこちょとくすぐらせてきた。
「ちょちょアハハ、やめてよッ!」
「なんだ、狸寝入りか」
顔を上げたら、彼はまだ寝ぼけ眼。目を擦り、再びわたしの顔を覗き込むように見つめる。
だからさ、そんな至近距離で見つめられたら、ドキドキしちゃうじゃないの。
昨夜はあんな事やこんな事までしちゃった仲だって言うのに!
けれど、わたしを見つめる西城さんの瞳は、とても優しいものだった。…だからこういう時にそういう顔をするのは、狡いってば。
言いたい事は山ほどある。けれど、何故か言えない。