【完】淡い雪 キミと僕と

「それにしてもアンタ痩せすぎだ」

「いやー…あなたに言われたくないですけど…」

「俺はトレーニングもしてるから筋肉もある。
軟弱な君の身体と一緒にしないでくれたまえ」

確かに、痩せ型だけど程よく筋肉はあり……

って、わたし何で彼の身体をじっくりと観察なんかしてしまっているのかしら?!

こんな痴女だなんてパパが知ったら泣いてしまうわ。

「抱きしめたら、壊れてしまうかと思ったぞ」

「それって華奢って事ね!ダイエット頑張った甲斐があったぁ~!」

「主に胸がな」

「さいってい!」

抱きしめて、キスをして、身体を重ね合わせた男女の会話とは思えない。

寧ろ何も変わっていないのではないかと思わされるくらい。…いや実際何か変わった訳ではないと思うんだけど。


彼が起き上がり、両手を伸ばしてその場で大きく欠伸をした。欠伸のせいで少しだけ涙目になっていたけれど、昨日は本当に泣いてしまってるのではないかと思った。

雨か涙かは分からなかったけれど、とても悲しい顔をしていたから。

彼のお腹の上で、雪も同じような欠伸をした。床に寝かされたのが相当ご不満だったようで、彼の身体の上で丸まって眠り始めた。それは、とても幸福そうな顔だった。


「そういえば洋服。洗濯して乾燥機に入れておいたから」

「お、案外気が利くじゃないか」

「だから…何を偉そうに…
さぁって着替えよう」

そう言って立ち上がろうとした瞬間、西城さんが強い力で腕を掴む。さっきまで意地悪そうな顔をして笑っていたのに、今度は少し寂しそうな顔をして眉毛を下げ、微笑う。

このッ、多重人格野郎め。



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