【完】淡い雪 キミと僕と
そして数10分後。
注文したベリーソースのパンケーキが運ばれてきた。
何とも乙女心をくすぐる可愛らしさだろう。
2段に積み重ねられた、ふわふわのパンケーキの上に、苺やブルーベリーが乗せられていて、真っ赤なソースがかかっている。横にはたっぷりの生クリームが添えられていて、見ているだけで涎が出ていそうだ。
それを見た西城さんは、’ゲェッ’っと明らかに嫌そうな顔をして言って、直ぐに目を輝かせたわたしを見て、小さく笑った。
こんな優しい顔をして笑う人だったか。
「アンタ……その顔…」
「何よッ。美味しそうな物を見て嬉しい顔をして何が悪いのよ?!」
「いや、大いに結構。
そんなに喜んで貰えるのならば、連れて来る甲斐があったよ」
柔らかくて、とても甘いパンケーキだった。けれど、西日を浴びた彼の優しい微笑みは、今のわたしにとってはこのパンケーキよりとても甘く感じるのだ。
本当にどうかしてしまったのかもしれない。
珈琲をすすりながら、パンケーキを食べ進める様を彼はただただ笑って見つめていた。
「千田ちゃんっていう後輩がいてね」
「あぁ、会社のか」
「そうなの。全く可愛くない子なのに、すごい可愛い子で」
「なんだそれ」
「決して美人でも顔が整ってる訳でもないんだけど…。性格が物凄く可愛い。
そうね、きっと言ってしまえば、琴子さんのような人かしら?」
「成る程。確かに琴子は可愛い」
また、さっきと同じようにズキリと胸が痛んだ。
理由なんて知らないけど。