【完】淡い雪 キミと僕と
犬たちには、とても甘い声。その強面の顔をデレデレすな。相当気持ち悪いぞ。
心の中で隼人に悪態をつき、渋々キッチンに行きお茶のペットボトルを取り出した。
勝手にきといて、は正しい。それにしても気持ち悪い男だ。冷蔵庫の中には野菜やら肉やら調味料が完備されている。
いつ来ても家はとても綺麗に片付けられているし、馬鹿犬たちはリボンなんかつけて可愛らしくいつだってトリミングされている。
お前に彼女が出来ない理由は何となく理解る。
「今日は何だって言うんだ」
ゲージの中から一匹チワワを取り出し、傍らに置き指で頭を撫でる。
犬はとても嬉しそうにしていたが、俺がキッチンから戻った途端恨めしそうな顔をしてこちらを睨みつける。…誰に命が救われたと思っている?!
「何もかもムカつくって言うんだよ。
じじいは勝手に縁談を勧めてきやがるし、その縁談相手はノリノリだし、母親は入院中で弱々しい癖に俺に八つ当たりして、一体俺が何をしたって言うんだ…」
「ほう、縁談か。天下の西城グループの跡取り息子は大変だねぇ~」
口ではそう言っても、実に楽しそうにヘラヘラと笑いながら隼人は言った。
「どんな女だ?すっげぇ不細工だったら笑えるんだが」
無言のまま、隼人へ携帯を差し出す。その中には菫とのツーショットの写真。保存はしていない。するつもりもない。だからいちいち彼女とのライン画面に行き画像を開かなくてはならない手間にさえ苛ついた。
画面を見て、目を丸くする隼人。やれやれと言った感じで頭を抱える。