【完】淡い雪 キミと僕と
「全く世の中ってのは不公平で敵わん。
すっげぇ良い女じゃないか」
「篠崎リゾートの一人娘だ」
「それはそれは、容姿が美しいだけではなく、育ちも良いときてる。言う事がないねぇ~。
西城グループの事業拡大の為の政略結婚だとしても、このレベルの女は早々いない。何を不満だと言うのか、全く理解出来ん」
「確かに菫さんはとても良い子だ。性格も良いときてる」
「じゃあ、お前は何がそんなに不満だって言うんだ。良いじゃないか。ここですっげぇ不細工な女だったらウケたんだが、つまらんぐらい出来すぎた女に見える」
「俺はただ……自分の人生を誰かに決められているようで、それが気にくわん」
「何だ、いつものただの我儘か。
彼女自身に不満がないって言うのならばそれはそれで良いじゃないか。
まぁ俺はこんな気の強そうな女より、泣きそうな顔で笑う’美麗’ちゃんの方が全然タイプだけどな」
その言葉に、隼人をぎろりと睨みつける。
隼人を睨みつけたつもりなのに、何を知らんが傍らに寝そべるチワワが大きな瞳をこちらへ向けキャンキャンと吠え出した。
…だからうるさいって言ってんだろ!!この恩知らずが!
「その美麗がだなッ!」
「美麗ちゃんが、何だ?」
全てを見透かしたような隼人の乾いた笑い。気にくわない。
そうだ、最近は全てが気にくわないんだ。
祖父がこの縁談にノリノリなのも、菫が俺を気に入っているのも、そして先制するかのように父親同士を交えて食事をしよう等。周りから固めていくつもりか?
それに母親も母親だ。せっかく見舞いに行き、こちらが歩み寄ろうとしていると言うのに…’あんたなんか産まなきゃ良かった’そりゃあ無いだろう。
誰も望んで産まれたいと腹ん中で叫んだつもりは無い。勝手に俺を作り、産んだのはあんただろうが、それを何が産まなきゃ良かっただ。
もしも過去に戻る事が出来たのならば、母親には真っ先に中絶を勧める。