【完】淡い雪 キミと僕と
「これは、仮定の話だが」
「ほう」
「例えば隼人にとって友人というか、心を結構許せる女友達がいるとする。
顔は結構可愛いし、スタイルも悪くない。雪のような小汚かった猫も愛してくれる。そういった女だ」
「それはそれはとても詳しい’仮定’の話だな」
「何とも思ってなかったけれど不慮の事故でそういう関係になってしまって
なのに次の日になればあっけらかんとして、お互い今まで通りの関係でいましょうって言われたら
お前ならば、どうする?」
俺の’仮定’の話に、隼人は大きく首を傾げる。
「1回やれてラッキー、かな?」
「それはお前ッ!男としてどうなんだ?!」
声を荒げる俺に、隼人は再び呆れかえった顔をする。
「男だからじゃねぇか。
顔は結構可愛くて、スタイルも悪くない女で、しかもヤッちまった後に面倒くせー事も言わず、お互い今までの関係でいましょうなんて言える女。
なんとも都合が良くって楽な女だろう?それは西城大輝が最も好きなタイプの物分かりの良い尻軽女じゃねぇか」
「あいつはそんな奴じゃねぇよ!!!!」
部屋いっぱいの怒鳴り声が響き、犬たちは再びキャンキャンワンワンの不協和音のコンサートの始まりだ。
隼人は耳をおさえ、更に呆れたようにこちらを一瞥する。
「全くお前が何を言いたいのか分からん。ならばお前は自分に縋り付き、責任のひとつでも取れ、と言われる事をその女に望んでいたのか?」
少し苛々したような素振りを見せ、煙草をテーブルに数回叩きつけ、それに火をつける。
隼人の言葉がぐさりと胸に刺さる。
そうだ、本来ならば、1回ヤッた位で彼女面をされるのは勘弁だった。そういった女は避けて生きてきた。
縋り付き、責任を取れ、等言われたら寒気が止まらない。それこそ死ぬまで恨まれ、末代まで祟られる結末になりそうだ。
…けれど俺は、美麗だってそういうタイプの女だと思っていた。